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人生最悪のバイトから学んだこと 辛い経験ほど面白い

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けんすけ@生涯現役
「60にして立つ」
30年遅れで不惑を目指す

 

私の二十歳代は、バイトに明け暮れていた。

それもひと所に落ち着いたものではなく、
自分でも何をしていたか覚えていないくらい、
転々としていた。

 

日雇いのバイトもやった。

募集広告を見て前の日に電話をする。

翌朝、指定した場所に出向くと、
マイクロバスに乗せられて、
どこへ行くとも告げられずに出発する。

途中、あちこちで止まりながら、
前の方に座った者から順番に降ろされていく。

 

私はとある工場の前で降ろされた。

※写真と記事内容は無関係です。念のため。

ここがどこだか見当もつかない。

これから何をするのかも分からない。

 

困り果てて呆然としていると、
向こうで不愛想な中年の工員が手招きしているのが目に入った。

数多くのバイトをしてきたが、
それが正真正銘「人生最悪」のバイトの始まりだった。

段ボールと格闘

不愛想な工員に工場の中に連れていかれ、
軍手を渡された。

工場には、何らかの機器を組み立てているのだろう、
いくつかのラインが並行しておかれていた。

各ラインのそばには、
機器の材料が入っているのか、
段ボールが山と積まれていた。

 

私は何も知らされずに、
各ラインが見渡せるやや広めのスペースに立たされた。

これから何が始まるのか、
緊張しながらあたりを伺っていると、
始業のベルが鳴った。

一斉にラインが動き始めると、
次々に段ボールが開封され、
中の機材がラインに乗せられた。

そして、空になった段ボールが、
もの凄い勢いで、
私のいるスペースに投げ入れられ始めた。

 

私は、この瞬間、ようやく自分の仕事を理解した。

「この段ボールを解体し、広げて積み上げろ」

要するにそういうことだ。

 

なるほど。

これなら何の説明もいらない。

単純肉体作業の極のような仕事だ。

 

急ぎ作業に取り掛かったが、
これが中々難物だった。

段ボールの底はガムテープでしっかり止められている。

ガムテープを丁寧に剥がしている時間などない。

力づくで底を突き破り、
引き裂くようにして箱を開く。

これ以外に方法はなかった。

 

底を突き破るには、
拳を使うのが早い。

まず一発段ボールにパンチを入れ、
空いた穴に手を差し入れて力を籠める。

その作業を繰り返した。

春先の肌寒い季節だったが、
たちまち汗だくになった。

 

こちらがいくら急いでも、
何しろ相手は数が多い。

物凄い数の段ボールが投げ入れられてきて、
とても追いつかない。

広めのスペースがやがて段ボールで埋まり始める。

気が付くと、段ボールは膝くらいの高さまで溜まっていた。

 

段ボールの山の上で段ボールの解体をする。

やりにくくて、作業効率が落ちる。

そうなると、段ボールの山は、さらに積み上がる速度を増す。

程なく、山は腰のあたりまで迫ってきた。

 

何とかせねばと必死になるが、
腰まで埋まってしまうと何ともならない。

頭上に段ボールを掲げ、
力付くでこじ開けるという
虚しい抵抗を続けた。

 

段ボールの山は胸に達し、
それすらも不可能になると、
後はもう成すすべはない。

埋まるに任せていると、
やがて、顔も埋まり、
頭上に伸ばした手の先も埋まり、
私は完全に姿を消した。

 

こうなるともう何も考えられない。

もちろん自力で脱出は不可能だ。

まさに遭難状態。

もしかしたら、何か叫んでいたかもしれない。

そこでようやくベルが鳴った。

 

ラインが止まり、工員が一斉に段ボールの解体を始めた。

みるみる内に段ボールが片付いていき、
私は段ボールの山から救出された。

誰にでもできる仕事の痛み

全て片付いて再びスペースができた。

私はスペースの真ん中で、
ただ茫然と突っ立っていた。

休む間もなくベルが鳴り、
再びラインが動き始めた。

段ボールが飛んで来る。

嫌も応もない。

必死に段ボールの底にパンチを入れた。

 

私が完全に埋もれ、ラインが止まる。

何度もそんなことが繰り返された。

 

パンチを入れている私の拳は、
いつか皮がむけ、
軍手に血が滲んでいた。

痛さが限界に達し、
足で踏み抜くことを試したが、
これでは効率が半減する。

血にまみれても、
拳で抜く以外になかった。

 

カッターがあればもう少し楽にできたかもしれない。

だがあの修羅場の中では、
慌てて手を切る危険もあった。

それにカッターを使っても拳を使っても、
痛みさえ我慢すれば解体時間はあまり変わらない。

もしかしたら、過去に怪我したバイトがいて、
それでカッター使用が禁止になったのかもしれない。

日雇いバイトの手の皮など、
怪我でラインが止まることと比べれば、
気にすることはないということだ。

 

そんな作業を7時間余りも続け、
夕刻、ようやく終業のベルが鳴った。

工場の入り口で、
マイクロバスが迎えに来るのを待ちながら、
眺めた夕日を今でも思い出す。

手を血まみれにして得た金額は
4500円だった。

 

私はついに、工場の人間とは、
一言も言葉を交わさなかった。

確かに、説明不要の仕事だった。

ただ誰でもいいから連れてきて、
そこに立たせておけばいい。

やることは明確だし、
ラインが動く時間が少しでも引き延ばせればそれでいい。

そんな仕事だ。

 

誰でもできる仕事をするには、
それなりの代償がいる。

私は自分の手を見て、
そう悟った。

 

仕事は希少性が価値になる。

日本中探しても、
その人にしかできないことであれば、
それこそ引っ張りだこだろう。

 

そこまででなくとも、
会社内、あるいは所属部署内で、
自分にしかできないことを作るべきだ。

自分の立ち位置ができれば、
仕事はぐんとやりやすく、
楽に進むようになる。

 

誰でもできる仕事には、
痛みが伴うと知るべきだ。

こういうことも、
私は経験から学ぶことができた。

人生、どんなことでも無駄にはならないものだ。

 

 

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IZUMI HASHIMOTO
IZUMI HASHIMOTO

学生時代に友人に誘われ演劇を始め、大学卒業後、就職せずに芝居の道に入る。旅公演で全国を巡るなどしていたが、30代半で塾講師に転身。さらに40歳で全く未経験のIT業界に就職。会計専門のSEになる。60歳で定年を迎えたの機に、新しくビジネスを始めると共に、魂や心にまつわる発信をライフワークにするべく研究・研鑽を重ねている。

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